会長挨拶

第85回日本皮膚科学会東部支部学術大会
会長 宇原 久(札幌医科大学医学部皮膚科学講座)

テーマは「The future is here」としました。未来は、できれば明るく希望に満ちていた方がよいのですが、医療をめぐる現場の環境は刻一刻と厳しい方向に向かっています。当初、現状と近未来の予測に加え、少しでも状況を良くするための方策を議論したいと思って考えたテーマです。とは言え、現在はあまり大上段に構えることなく、ちょっと未来を意識した意見の交換ができたらいいな、くらいの気持ちでいます。ポスターはフクロウを図案化しました。向かって左がアイヌ語でカムイチカプ(神である鳥)、コタンコルカムイ(森の守り神)などと呼ばれるシマフクロウ、右がアイヌ語でクンネレッカムイ(夜鳴く神)のエゾフクロウのつもりです。大きな目で本会と自分たち医療者の現在と未来をしっかり見守ってもらいたいという希望を込めました。

会議の概要を紹介いたします。招待講演1はメラノーマの遺伝子異常の世界的な権威であるUCSFのBastian教授にお願いしました。2018年、WHO分類第4版では紫外線の影響を加味した分子生物学的変化に基づいたメラノーマの新規分類が提案されました。先生は執筆者のお一人で多くのエビデンスを提供されています。最新情報をお話しいただきます。招待講演2、Garr Reynolds先生は米アップル社などでの勤務を経て、スティーブ・ジョブス流のプレゼンテーションに日本文化「禅」(シンプルなうつくしさ)を融合させた手法「プレゼンテーションZen」を提唱しました。著書は世界20カ国で発売され、35万部以上の大ベストセラーになっています。シンプルかつ記憶に残るプレゼンメソッドを伝授いただきます。招待講演3は当学の松村博文先生が2020年度日本人類学会賞を授与されたテーマであるホモ・サピエンスの拡散について講演いただきます。シンポジウムは薬疹(重症薬疹の疫学、治療、分子標的薬による薬疹、減感作療法)、感染症(抗菌薬の適正使用、高齢者の重症感染症、トリビア)、食物アレルギー(診療の手引き最新版の解説、他科との連携と検査の実際、魚介類のアレルギー)、好中球(基礎、病理、腫瘍性および炎症性疾患における好中球の役割に関するレビュー)、メラノーマ(治療が効きにくい粘膜型に焦点を当てた、薬物、放射線療法、基礎領域での最新情報と展望)、教育講演は母斑(遺伝性疾患を持つ患者さんやご家族との付き合い方と母斑という用語の妥当性について)、行動経済学の医療への応用、皮膚科領域でも重要さを増す在宅診療の実際、クイズ形式で学ぶ非腫瘍性疾患へのダーモスコピーの応用、皮膚外科と創傷処置の基礎、を取り上げました。今まさに私自身がお話をお聞きしたいと思う先生方に演者や座長をお願いしました。

そして、土曜日の午後には歌手・竪琴ライアー奏者の木村 弓さんと中川敏郎さん(ピアノ)のコンサートを企画しました。木村さんは宮崎駿監督作品「千と千尋の神隠し」の主題歌「いつも何度でも」を作曲して歌い、第43回日本レコード大賞を受賞されました。2004年の「ハウルの動く城」でも、詩人・谷川俊太郎氏と共作した「世界の約束」が主題歌に起用されました。また、木村さんはアイヌの詩に曲を付けて発表してきました。元になった『アイヌ神謡集』は、文字を持たなかったアイヌ民族の中で歌い継がれてきたユーカラの一部を19歳で夭折したアイヌの少女、知里幸恵が文字化し、日本語に訳されたものです。また、土曜日のイブニングセミナー終了後に札幌医大皮膚科教室員と同門会員+αによる弦楽アンサンブルも予定しております。

本会はハイブリッド開催です。現地にお越しの方も、WEBで参加の方にも十分に楽しんでいただきたいと教室員、同門会員一同で願っております。よろしくお願いいたします。

招待講演 演者のご紹介

招待講演1  Boris C. Bastian, MD, PhD.

WHO分類第4版(2018)でメラノーマの新規分類が提案されました。先生は執筆者のお一人であり、本腫瘍の遺伝子異常について多くのエビデンスを提供しています。

Dr. Boris Bastian received his MD degree and Dr. med degree from the Ludwig-Maximilian University of Munich. After completing a residency in dermatology at the University of Würzburg, he received additional training in dermatopathology and completed a postdoctoral fellowship at the University of California, San Francisco before joining the institution's faculty and starting his research laboratory at UCSF’s Helen Diller Family Comprehensive Cancer Center in 1999. In 2010 he moved to the Memorial Sloan-Kettering Cancer Center to become Chairman of the Department of Pathology. In 2011 he returned to UCSF, where he now holds the title of Gerson and Barbara Bakar Distinguished Professor of Cancer Biology and Professor of Dermatology and Pathology. He founded the Clinical Cancer Genomics Laboratory at UCSF, which performs molecular diagnostics for patients of the Helen Diller Family Comprehensive Cancer Center. He has clinical responsibilities in the Dermatopathology Section of the Departments of Dermatology and Pathology, where he also oversees the molecular diagnostic laboratory.

Dr. Bastian’s research focuses on the molecular genetics of cutaneous neoplasms, with a particular emphasis on the discovery of genetic alterations useful for diagnosis, classification, and therapy. His laboratory has contributed to the discovery of several genetic alterations in melanocytic neoplasia that are relevant for therapeutic and diagnostic purposes and his proposed integrated taxonomy provided the framework for the recently revised WHO classification of melanocytic neoplasms. He served as the President of the Society of Melanoma Research from 2010 to 2013 and has received numerous awards for his work including the election to the German National Academy of Sciences, the Lila Gruber Award for Cancer Research of the American Academy of Dermatology, and an Outstanding Investigator Award of the National Cancer Institute.

招待講演2 Garr Reynolds

プレゼンテーションの世界的な第一人者。1989年にJETプログラムで来日して以来、約30年渡り日本に在住し、その文化や哲学を研究し続けている。住友電気工業や米アップル社の勤務を経て、スティーブ・ジョブス流のプレゼンテーションに日本文化「禅」を融合させた手法「プレゼンテーションZen」を提唱。シンプルかつ記憶に残るプレゼンメソッドとして名高く、著書「プレゼンテーションZen」は世界20カ国で発売され、35万部以上の大ベストセラーに。その他の著書には『プレゼンテーションZenデザイン』、『裸のプレゼンター』、『シンプルプレゼン』、『世界最高のプレゼン教室』などがある。現在は関西外国語大学にて教鞭をとる傍ら、奈良県立国際高等学校の名誉校長も務め、教育分野におけるプレゼンテーション能力の向上にも励んでいる。米オレゴン州出身、奈良県生駒市在住。

招待講演3 松村 博文

札幌医科大学 保健医療学部 理学療法学科 教授
「ホモ・サピエンスのユーラシアへの拡散とアジア人の起源」

1984年北海道大学理学部卒、京都大学霊長類研究所、東京大学理学系研究科を経て現職。専門は人類進化学。人骨の形態の変異や多様性から、ホモサピエンスの進化、移動、拡散、環境適応などのプロセスの解明にとりくんでいる。特にアジア各地の数々の遺跡の発掘調査により発見された先史人骨の研究をもとに、アジアの人類史を復元することをライフワークとしている(その功績により2020年度日本人類学会賞受賞)。

コンサート 演奏者のご紹介

木村 弓[きむら・ゆみ / 歌手・作曲家]

米カリフォルニア州立大学にてピアノを専攻。1988年に竪琴ライアーに出会い、独自のスタイルの弾き語りを確立。2001年、宮崎駿監督作品「千と千尋の神隠し」の主題歌「いつも何度でも」を作曲して歌い、第43回日本レコード大賞金賞、他を受賞。2004年の「ハウルの動く城」でも、詩人・谷川俊太郎氏と共作した「世界の約束」が主題歌に起用される。これまでに7枚のアルバムを徳間ジャパンコミュニケーションズよりリリース。

今年9月18日に札幌で皆様に歌、演奏をお届けできることを楽しみにしております。今、地球規模で多くのチャレンジに直面している私たちではありますが、そのような中でも、音楽を通して、心温まるひと時を皆様とご一緒に過ごすことができればと願っております。

中川 俊郎[なかがわ・としお / 作曲家・ピアニスト]

1958年東京生まれ。桐朋学園大学作曲科卒業。作曲を三善晃、ピアノを末光勝世、森安耀子各氏に師事。「Music Today '82」国際作曲コンクール第1位、第28回中島健蔵音楽賞、他受賞多数。日本作曲家協議会常務理事、お茶の水女子大学非常勤講師。